中学2年生の時からずっとスピッツを聴いているのだけど、一番好きな曲は?と訊かれたら間違いなく『冷たい頬』と即答する。
僕がスピッツを聴くようになったきっかけの曲でもあるけれど、それを抜きにしても、他のどんな有名曲よりもスピッツらしさがふんだんに詰め込まれていると思う。
冷たい頬がどれほど素晴らしいかを僕なりに頑張って説明したい。
まずはPVを貼り付けておきます。曲を知っている人も知らない人も、とりあえず聴いてみましょう。
1998年発売のアルバム『フェイクファー』からの先行シングルとして発表されました。
このフェイクファーも、スピッツのアルバムの中で個人的に一番好きです。メンバーは(主にレコーディング的な意味で)あまりうまくいかなかった作品と言っていますが。。。
この曲のいいところを3つに分けて説明をしたいと思います。
①歌のメロディが分かりやすくて覚えやすい
イントロのギターのアルペジオもそうだし、歌いだしの「あなたのことを 深く愛せるかしら」という特徴的な歌詞に乗せて流れるメロディが、初めて聴いたときすごく印象的だった。
このメロディは曲中で何度か繰り返され、最終的にラストサビ後にもう一度流れて〆られるので、ループ効果で頭に残りやすいのではないだろうか。
カラオケで曲を覚えるのが苦手な友人が、「冷たい頬は3回聴いて覚えた」と言っていたくらいだし。
キーも割と低めだし、カラオケが苦手な人も歌いやすいと思う。僕は高音が絶望的に出せないのでキーを下げないと歌えないけれども…。
②メンバーそれぞれの特長が盛り込まれている
①でも書いたように、イントロからきれいなギターアルペジオが流れる。スピッツはアルペジオが美しい曲が多く、それはテッちゃんの得意技である。
それと並行して流れるアコギのコードもよい。マサムネさんの歌声は最早ここでは語るまでもないだろう。
冷たい頬はおとなしめの曲だけど、時折うねりを見せるリーダーらしいベースラインが存在感を放つ。
間奏のベースソロもいい場面転換になっている。僕はその部分を聴いていると、何だか物語における回想シーンのような想像してしまう。
ドラムは一見地味に聞こえるかもしれないが、イントロから少しずつ音数が増えていき、サビになると一気に感情を放出するような雰囲気は、確実にドラムの表現で完成されているといえる。
単調なリズムでもセンスよく叩く崎ちゃんの技術力は、スピッツのライブを何度も観ている人なら分かると思う。
長くなってしまったが、このようにスピッツ好きな人なら容易に想像できるであろうメンバー4人それぞれのよさがこの1曲に詰め込まれているのだ。
(しかもそれらがうまく調和されている。すごい。)
③歌詞の言葉選びが秀逸すぎる
この曲の歌詞のよさを語るにはなかなかいい言葉が出てこなかったので、歌詞の一部分を引用させていただく。
夢の粒も すぐに 弾くような
逆上がりの 世界を見ていた
壊れながら 君を 追いかけてく
近づいても 遠くても 知っていた
それが 全てで 何もないこと 時のシャワーの中で
(スピッツ''冷たい頬’’ ラストサビより)
僕が冷たい頬の歌詞で一番好きなところだ。
儚さと幻想感、そして喪失感などのいろんな感情がカオスに渦巻いているように感じ、それでいて言葉は美しく見えるという魔法の歌詞みたいだ。こんな言葉選びができるマサムネさんって何者…。
(特に初期の)スピッツの曲のテーマが「性と死」というのはファンの間で有名だろうけど、この曲もそういうテーマで作られたもののように感じるな。真相はマサムネさんのみぞ知るというべきか。。。
また聴き手によって様々な考察がされる曲というのは、それだけで魅力的な要素だと思うけど、冷たい頬もたくさんの考察がされている。ネットで検索するといろんな考え方に触れられるので、興味があったら見てみよう。
…いかがだっただろうか。
冷たい頬のよさをどうにか説明したくて、今回はそれひとつについて書き綴ってみた。
個人的な話をすると、2017年の3050ライブで、初めてこの曲を生で聴くことができた。
8月の前半、香川県の野外会場での1日目だった。元々横浜アリーナのチケットが当選していたので他の公演に行く予定はなかったのだけど、地元も近いし同じくスピッツ好きの母親と行けたら喜ぶかなと思い誘ったのだった(僕がスピッツを知ったのも殆ど母親の影響である)。
ヘビーメロウのあとでマサムネさんがアコギに持ち替えたところで期待がよぎり、イントロの時点で既に涙腺が緩んだのを今でも覚えている。
横アリではこの部分がスカーレットになっていたので(円盤化されているセットリストです)、香川に来なければ聴けなかった。本当によかった。
冷たい頬には、スピッツのすべてが詰め込まれている。