ただのモノローグ

しがないヘイホーが書く日記

ロストインタイムを聴き続けて今

 

あの頃はよかったなんて 言いたくはなかったのにな

 

2013年、友人と行った神戸のフェスで、海北大輔さんが『列車』のサビをアカペラで歌っていた光景を今でもハッキリ憶えている。

LOST IN TIMEというバンドを好きになったのは、高専の2年生の時だった。何年も前に発売されたスピッツのトリビュートアルバムに収録されていた「田舎の生活」を聴いて、何かビビッときたものがあったのだ。

すぐさま2ndアルバムと3rdアルバムを借りて聴いて、どこか哀愁のあるメロディを感じた。そのあとに1stアルバム『冬空と君の手』を聴くことで、その圧倒的な青春パンク感に衝撃を受けて更に好きになる。初期はこんな感じだったのか。

 

やり切れない孤独や後悔を歌った暗めの曲が多く、そういうものにある種の共感を持ってハマってしまったのだけど、実際にそういう曲が生まれたのは、当時からしても結構昔のことだった。

僕が初めてライブを観た頃には、「希望」「30」など未来へ向けた前向きな曲が増えていた。アルバム『()トラストオーバーサーティー』が発売された時期だ。

 

僕が東京に来た年は、ちょうどバンドがデビュー15周年を迎えつつある頃で、下北沢で過去のアルバムを振り返る再現ライブを演ったりしていた。その全ての公演に参戦した僕は、LOST IN TIMEの殆どの曲を生で聴いたことになる。

 

翌年には実際に15周年を迎え、バンドは何となく明るい方へ向かっていけているのだなと思っていた。

しかしそれは、渋谷のさくらホール公演で発売された新曲を聴いて、いろんな意味で打ち砕かれたのだった。

 

何もしたくない このまま消えてなくなりたいな

 

アンコールで披露された『Repentance』。

歌い出しから、ド直球な弱音の如く吐き出された言葉に、正直戸惑う。「海北さん、何があったんだ!?」と純粋に思ってしまった。

これまで何度か経験した心折れそうなことが、またあったと語る。

その詳細を僕が知る由はないけれど、やっぱり人生はいいことばかりではない。もうこれ以上の不幸はないだろうと思っていても、必ずどこかで、それを上書きするような災難に遭ってしまう。それでも何とか生きていかないといけないんだな、ということを考えさせられた。2018年のライブだった。

 

 

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先週6月20日LOST IN TIMEのワンマンライブに行ってきた。去年配信で何度かライブを観たことはあったけど、生で聴けたのは1年半ぶりだったかな。

海北さんの歌は、いつも聴き手にいろんな気持ちを力強く伝えてくれる。そういった面で、海北さんは(自分の中で)最高の歌うたいだと再認識できた。

 

学生の頃から聴き続けている『列車』は、歳を重ねるにつれて、その歌詞の重みがじわじわと増してくる。イントロが流れた瞬間、自分の中で無意識に張り詰めていた糸がプツンと切れたような感覚があった。

列車が演奏されている5分間、僕はほとんど顔を上げることが出来なかった。どうしても涙が止まらなくなって、俯きながらずっとハンカチで目を覆うことで精一杯だったのだ。

しかし、俯いていても歌はしっかり聴こえてくる。「あの頃はよかったなんて言いたくはなかったのにな」という、これまで何百回も聴いたであろう言葉が、容赦なく耳に入ってくる。

歌を聴きながらここまでつらくなることなんて今までなかった。ライブで号泣してしまうのも初めてで、どうしたらいいか分からなくなってしまった。椅子に座り直すのもなんか違う気がして、ずっと立ちながら俯いていたのだけど。

 

あの1曲で、自分がずっと抱えていた黒い感情がまとめて浮き彫りになったのかもしれない。前から薄々気付いていたが、きちんと向き合わずおざなりにしていた感情。

こういうご時世で、自分の何倍も何十倍もしんどい思いをしている人がいることは分かっている。だけど僕にもこの1年で色々嫌なことがあった。ここにさえ書けないことも含めて、色々なことが。10代の頃から全く成長していないことを思い知らされて、正直心が折れたこともあった。なるべく気にしないようにしていたけど、やっぱりずっと疲れていたんだな、ということに改めて気付かされた。

そうやって今一度、結果論だけど自分自身を見つめ直す機会になって本当によかったと思う。ボロボロに泣きまくった直後に「希望」を聴いてスッキリし、「ココロノウタ」や「昨日の事」などの力強い演奏にも励まされた。

 

LOST IN TIMEのライブが終わったあとは、何故だかいつも「明日も頑張ろう」という気持ちになる。この日は特にそう思えた。具体的に頑張る方法なんて分からないけれど、少しだけ自分と向き合うこともできたし、何とかやれることをやっていこう。

そういう思いを持って、帰りに物販でニューデザインのTシャツを買ったのだった。(ドラムの源ちゃんが着ていたパープルのやつ)

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